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当事者間の公平を主張する「同時履行の抗弁権」について
カテゴリ:不動産取引についてのイロハ  / 投稿日付:2023/08/17 15:30

前回のブログでは、双務契約と片務契約について解説しました。

売主、買主が義務を負う!!双務契約のお話

そこから派生したお話をしたいと思います。


双務契約では、当事者同士がそれぞれ債務(義務)を持っているという内容でしたが、
それでは、当事者の一方がその債務を履行しない場合どうなるのでしょうか。


一方が自分の債務に履行しない場合、相手方は自分の履行を拒絶できる権利があります。
例えば
「あなた(買主)が代金払ってくれないなら、私(売主)だって物件渡せませんよ!!」

という風な感じです。逆も然りです。

とまあ、わざわざ説明するまでもない、当たり前のことですが笑
このことを『同時履行の抗弁権』(民法533条)と言います。


相手方が履行しないからといって、直ちに
「損害賠償くれよ!」「契約解除だ!!」というわけにはいきません。


同時履行の期間というのは、自分も債務に着手していない状態ですからね。
履行に着手し、相手方に相当の期間を設け、催告をする必要がアリマス。

それでも、履行しないとなると、債務不履行となり損害賠償や契約解除の対象と
なり得るでしょう。



□他にも認められる同時履行の抗弁権



双務契約のほかに、売主の瑕疵担保責任や契約解除における原状回復義務にも

適用されるものです。


身近な例で言うと
領収書発行を依頼したのに拒まれた場合にも
同時履行の抗弁権が成り立ちます。
「領収書出してくれないなら、お金は払いません」
という主張が認められるのです。


子供の頃お釣りもらっていいならオツカイに行く
とごねていましたが、これも一種の同時履行の抗弁権でしょうか。



逆に、賃貸借契約において「建物の明渡義務」と「敷金返還義務」は
同時履行の関係にはなりません。
敷金には、賃料や遅延損害金、原状回復費用等を担保する意味合いがあります。
明渡時には、まだ賃借人の債務が確定していない状態なので
同時履行が成り立たないという言うわけです。
ですから、敷金を変換してくれないなら出ていかない!という主張は認められません。



□まとめ



小難しい話ですが、あなたがこれをしてくれないなら、私だってしませんけん!
という普通の流れの話です。
「同時履行の抗弁権」という民法により
当事者同時の公平が保たれているというわけですね。

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